怖いコント
ラーメンズ「採集」
「怖いコント」という話題の中で必ずと言っていいほどあがる作品。
個人的には「秋の夜長に、静かに自室で見る」のが合っているように思います。
想像し記憶し空間に没入できれば、後半の伏線回収で大いに楽しむことができるはず。
“怖いネタ”というだけでなく、あくまで主軸はお笑い。バラエティ豊かに、色々な角度から笑いを生んでくれます。
かつ、登場人物の2人の関係性や、それぞれが抱く想いや葛藤を感じることができる、趣深い作品となっています。
バナナマン「ルスデン」
どこかコミカルに、しかし気づけばどんどん取り返しのつかない事態になっていく…という様子が留守電を通じて日村さんに伝えられていきます。
設楽さんの怪演と、日村さんのリアクション・演技力が素晴らしい。
あっという間に時間が過ぎていく感覚を覚えると思います。
留守電の性質を生かした時間差での展開、
現在の状況とのギャップにより生まれる謎など、優れた作品だと思います。
ある展開のためにドアの鍵を開ける必要があるのですが、そのために設けられたとある人物の「訪問」シーンは“鍵を開けっぱなしにしておいた”という事実を全く意識させないほど自然なもの。
非常にスリリングで、面白くて、ラストまで一気に突き進んでいくネタです。
千原兄弟「ダンボ君」
今の時代で言うなら「伏線回収」という扱いを受けることもあるのでしょうか。前半と後半で全く違う意味を持つ言葉遊びが秀逸。
個人的に一番好きなのは以下の2点。
①ダンボくんの“素顔”が出てくる場面の、異様なビジュアルと声
②じわじわと明かされる背景の仄めかし
また、ダンボ君のビジュアルが絶妙にポップで、雑で、怖い。
「ウシジマくん」で債務者がこういう格好させられてそう感が半端ない。
ずっとバタバタ動いてる様子も良いですね。
劇団ひとり「304号室 青木」
ホラー映画劇中で映されるビデオを思わせるかのような画質と、
奇妙なbgmにより不気味な雰囲気が形成されているこのネタ。
見る人によって様々な感想が出てくる、非常に印象的な作品となっています。
松本人志「義父」
今回挙げているコントの中で、人によっては“最もリアルな怖さ”と言う人もいるでしょう。
「“義父”になりそうな人間、周りにいるな…」
「こういう義父と息子が上手くいっていない家庭もありそうだよな…」
というように、このネタが我々の日常と地続きになっている風に感じ、さらに恐怖を覚えてしまうという。
個人的に好きなのは、導入部分である「義父が一人で食事をしている場面」です。
このくだりで、義父がどういった人間性で、どういった生活環境なのか、普段の立ち振る舞いはどんな感じなのか、
これらを解像度高く予想することができます。
個人的には、
「果たしてあの場面の後どうなったのか」が気になります。
あの後、子は。帰ってきた母親は。そして義父は。
その後の日常は。
あばれるくん「妻へのプレゼント」
テンポ良く現代的な笑いの取り方で、
単純にコントとして面白いネタだと思います。
わかりやすい“伏線回収”の形で、作品としてのまとまりも感じます。
ちなみに「動かないマネキンに服を着せる〜」という言葉って、「動かない」という枕言葉は無くても問題はないんですよね。マネキンはそもそも動かないので。
ただ、「動かない」という枕言葉から、私たちは“不穏な何か”を具体的な形で予想することが出来ます。要するにわかりやすい。
「動かない」を付けない方が端的かつリアルであり、かつ冒頭で「マネキンに服を着せるー」と言った時にその後の展開を悟らせにくいのでは、という意見もわかります。
一方で「動かない」と付けていることでオチのインパクトを引き上げ、ひいてはネタの印象度も引き上げている部分はあると思います。
鬼ヶ島「大好きなお母さん」
鬼ヶ島の色々なネタに共通する独特の異様な雰囲気が個人的に好きで、
また、この「大好きなお母さん」は構成に優れたネタとなっています。無駄が少なくスマート。
ぜひ最後までご覧ください。
シティボーイズ「灰色の男」
カーテンを閉めるくだりが一番好きです。
このネタの白眉。
カーテンを閉める、という一つの行為で見ている者に色々な感情を抱かせ、さらには舞台の見え方すら物理的に変えてしまう。
時折見られる激しい情動、終始どちらに転ぶのか、何かが起きる可能性があるのか、何かが明かされるのか待ち構えながら見続ける、この灰色加減がたまらない。
オチも秀逸だと思います。
「重大事件において、無罪判決が出た人間のその後」というテーマ性を持つネタでもあるので、
色々なことを考えながら見るのが良いと思います。
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