意味がわかると怖い話 “二”
一家で
一人の女の子がいた。性格は明るく、小学校ではたくさんの友達に囲まれていた。
また、女の子は大のおじいちゃん子で、おじいちゃんも女の子の事を本当に可愛がった。
しかし、おじいちゃんは今は入院しており、余命は長くなかった。
医師がもう残りわずかの命である事を伝え、女の子は両親に連れられ病院に行った。
病室で女の子の両親はおじいちゃんと話した後、医師の説明を受けに病室を出て行った。
病室には女の子とおじいちゃんの二人。
女の子はおじいちゃんに、学校の事や最近楽しかった事などいろいろな事を話した。
しかし、途中で女の子は泣きながら
「おじいちゃんいなくなるの?」
と聞いた。するとおじいちゃんは
「おじいちゃんが死んだら、お父さんとお母さんと一緒にかなしんでくれるかい?」
と言った。女の子は
「うん……でも死んじゃいやだよ」
とつぶやいた。
その後、女の子は家に帰ることになり、その次の日おじいちゃんは帰らぬ人となった。
女の子はその日、わんわん泣いた……。
一か月後、ある記事が新聞の隅に載った。
一部抜粋すると
「一家心中、動機は全くの不明。女の子の名前は斉藤加奈ちゃん」
【解説】
「一緒に悲しんでくれるかい?」ではなく
「一緒に加奈、しんでくれるかい?」
夫婦
「おい、まだかよ?」
俺は、女房の背中に向かって言った。どうして女という奴は支度に時間が掛かるのだろう。
「もうすぐ済むわ。そんなに急ぐことないでしょ。…ほら翔ちゃん、バタバタしないの!」
確かに女房の言うとおりだが、せっかちは俺の性分だから仕方がない。
今年もあとわずか。世間は慌しさに包まれていた。
俺は背広のポケットからタバコを取り出し、火をつけた。
「いきなりでお義父さんとお義母さんビックリしないかしら?」
「なあに、孫の顔を見た途端ニコニコ顔になるさ」
俺は傍らで横になっている息子を眺めて言った。
「お待たせ。いいわよ。…あら?」
「ん、どうした?」
「あなた、ここ、ここ」女房が俺の首元を指差すので、触ってみた。
「あっ、忘れてた」
「あなたったら、せっかちな上にそそっかしいんだから。こっち向いて」
「あなた…愛してるわ」女房は俺の首周りを整えながら、独り言のように言った。
「何だよ、いきなり」
「いいじゃない、夫婦なんだから」
女房は下を向いたままだったが、照れているようだ。
「そうか…、俺も愛してるよ」こんなにはっきり言ったのは何年ぶりだろう。
少し気恥ずかしかったが、気分は悪くない。俺は、女房の手を握った。
「じゃ、行くか」「ええ」
俺は、足下の台を蹴った。
【解説】
一家心中を図っている。
お義父さんとお義母さんは他界しており、
自分たちの息子も既に手にかけている。
「孫の顔を見ればニコニコ顔になるさ」は、あの世で息子の顔をお義父さん達が見ることになる、という意味。
女房が「俺」の首を指さすのは、ネクタイの締め忘れように思わせて、首吊りのロープのことである。
プレゼント
クリスマス、トムはサンタクロースからのプレゼントを楽しみにしていた。
朝起きるとクリスマスツリーの下にプレゼント箱が3つほどあった。
窓からサンタが中を覗いているのが見える。
サンタはニタニタと笑いながらトムを見ている。トムはニタニタ笑っているサンタを見て少し不気味に思いながらもプレゼントの置いてある所に行った。
トムはまず一つ目のプレゼント箱を手に取った。サンタは更にニタニタ笑っている。
プレゼントの箱を開けると中から長ズボンがでてきた。トムは少しがっかりしたような顔をしながら次の箱を開けた。
サンタは腹を抱えながら笑っている。
二つ目の箱を開けると中からサッカーボールがでてきた。
トムはますます不機嫌になり、とても腹が立った。
【解説】
トムには足が無かった。
ハンバーグ
妻が作るハンバーグはおいしいのだが、今日はいつもと味が違う気がする
「これ何の肉なんだ?」
「静岡産よ」
「へぇ~」
【解説】
夫は「静岡産」と解釈したが、妻は「静岡さん」と言っている。
占い
兄が狂乱し、家族を皆殺しにした。すぐに兄は逮捕され、死刑となった。
妹は幸運にも生き延びたが、事件のショックで記憶を失ってしまった。
父も母も失い、記憶もない。空っぽな心で無気力なまま生きていた妹は、ある日占い師と出会い、自分の過去を占ってもらうことにした。
「何故兄は発狂したのでしょう」
「いいえ、アナタの兄は冷静でした」
「何故家族を殺したりしたのでしょう」
「いいえ、兄が殺したのはひとりだけです」
そして妹は全てを理解して、泣いた。
【解説】
妹が家族の命を奪ったが、その罪を兄が冷静に被った。
兄が命を奪ったのは、極刑となった自分の命のみである。
ヘッドホン
さっき、2万4千円のヘッドホンが突然壊れた。
音楽を大音量で聴き過ぎたせいか、いきなりプチッと音が出なくなった。
俺はムカついて思わずわざとテレビを床に落とした。
ズドンとテレビが床に落ちた振動を感じて俺はふと我に返った。
何やってんだ俺は。このテレビは15万もしたじゃないか。
たまたま落とした場所には布団が敷いてあって、落ちた振動は多少あったが落ちた音は全くしなかった。
たぶん壊れていないだろうと思いながらテレビの電源を入れてみた。
映像は普通に映るのだが、音が全く出なくなっていた。
最悪だ。15万円のテレビまで壊れてしまった。
それにしても今日は外が不思議なくらいに静かだ・・・
気晴らしにちょっと散歩にでも行ってみようかなぁ。
【解説】
鼓膜が破れ、耳が聞こえなくなった。
ひき逃げ
ひき逃げにあって入院してたんだけど、やっと退院できた。
仲の良かった友達が家に遊びに来た。
「病院にお見舞いにいけなくてごめんな」
「気にしないでよ」
「犯人の顔見たのか?」
「いや~、いきなりだったから覚えてないんだ」
「そうか」
「お前も気をつけろよ」
「あぁ、じゃあそろそろ帰るわ。今度はちゃんとお見舞いに行くからな」
「ありがとう」
【解説】
ひき逃げの犯人は友達。
自分の顔を覚えていないかを確認しに来た。
命を奪うことが出来なかったため、「今度はちゃんとお見舞いに行く(ちゃんと轢いて命を奪う)」と言っている。
インターホン
私は仕事ですごく疲れ自分のマンションに帰ってきた。
高い階に住んでいるのでエレベーターに乗ろうとしたらすでに男が乗っていた。
男は帽子を深く被り顔を見せないようにして立っている。
「気持ち悪いなぁ」と思ったが仕方がないので軽く挨拶をして乗った。
男は返事もせずただじっとうつむいたままだった。
男は途中でエレベーターを降りた。降りる時に肩がぶつかった。
一応私は「あ、すいません」と謝ったが、その男は無視してまたさっきのように顔を見せないよううつむいたまま降りていった。
自分の部屋に帰り、少し落ち着いたところで何気なく男とぶつかったところを見てみると、結構派手に血がついていた。
「うわぁー、なんなんだ。気持ち悪い」と思ったがさほど気にせずにいた。
それから何日か後、突然部屋のインターホンが鳴った。『ピンポーン』「誰だろう。」とドアの覗き穴から見てみると警官が立っており、
「すいません、実はこのマンションで何日か前に殺人事件があったのですが、あやしい人物などを目撃されませんでしたか?」
と聞いてきた。
「あ、あの人のことかな」と思ったが、その時見ていたドラマがちょうどいいところだったし、仮に「見た」とでも言おうものなら詳しく聞かれてかなりの時間を割かれてしまうし、大変だと思ったのでドア越しに「いいえ、見ていません」と言うと、何事もなく警官は帰っていった。
それから次の日、テレビを見ていたらニュースである殺人事件のことを報道していた。
場所はこのマンション。あの変な男とエレベーターに乗り合わせた日だ。
「やっぱりあの日なにかあったんだ」もう犯人は捕まったらしい。
そのあとテレビに犯人の顔写真が映された。
あの警官の顔だった。
【解説】
エレベーターで乗り合わせた犯人が、自分の顔を見ていないかを確認し、見ている場合は口封じをするために警官の格好をしてインターホンを鳴らしていた。
降車ボタン
また夜遅くにバスに乗って家路についた。
その日は疲れたしバスでも爆睡してたんだが、
ピ ン ポ ー ン
ブザーの音で飛び起きた。表示を見ると丁度降りるバス停の前、
慌てて俺は荷物を持って降りた。危ないところだった…
それにしても、バスの運転手も誰も客が乗ってないバスで
終点まで行かなきゃいけないのは怖いだろうに
【解説】
運転手と「俺」以外バスには乗っていない。
運転手は運転するだけ、「俺」は爆睡している状況で、ブザーを鳴らせる者はいない。
鉄板
外で散歩をしていたら、「キャー!」という女性の悲鳴が聞こえた。
私は驚いて行ってみると道路で女性が、縦2m・横2m・暑さ50cm程の鉄板らしき物の前に座りこんでいた。
その女性に話を聞こうとしたが、ビックリしたのか話せない。
すぐに作業服を着た人が来て訳を話してくれた、どうやらビルの上で工事をしている時に落としてしまったという。
幸い怪我人は出なく、女性は驚いて腰が抜けてしまっただけらしい。
それにしても赤いタイルの上に真っ黒の鉄板とは不気味である。
散歩も飽きて夕陽が暮れ前に、もう一度その場所に寄ってみた。
その鉄板らしき物はまだ残っていた。とても重いので処理ができてないのだろう。
危ないからか、近づけないように警備員のような人がいた。
先ほどの女性もいた。声をかけてみた。
「先ほどは驚かれたことでしょうね」
女性は
「驚きました。悲鳴を聞いたときはビックリしました」
と返してくれた。
【解説】
鉄板の下には悲鳴をあげた女性が下敷きになっている。タイルが赤く染まっているのはそのため。
トンネル
あるところに通ると必ず幽霊にあうトンネルがありました。
トンネルの近くにある中学校の女子が三人、そこに肝試しに行くことにしました。
夜いくと怖いのでお昼に行きましたが、お昼に見てもトンネルはやっぱり怖く、三人手をつないで走り抜けることにしました。
トンネルを抜けた後、息を切らしながら三人は言いました。
「真ん中で良かった」
【解説】
全員が「3人の真ん中に自分は居た」と認識している。
女子A「私が真ん中で良かったぁ」
女子B「私が真ん中で良かったぁ」
女子C「私が真ん中で良かったぁ」
…ん?3人が前を向いたまま手を繋げば、その真ん中に居ることができるのは1人だけ。
しかし全員が自分は真ん中にいた、と認識している。
真ん中の女子は「両隣の友達と手を繋いでいた」から、自分は真ん中に居たと認識するのは至極当然。問題はここから。
ではなぜ両端の女子2人は、「自分は真ん中にいた」と錯覚したのか?
これは実際に真ん中にいた女子と同じく「両隣の人と手を繋いでいたから」そう錯覚した。
つまり手を繋いで走る3人の、それぞれ両側に何者かが存在し、端の女子と手を繋いでいたのである。
ホームパーティー
誕生日に、ホームパーティを開いた。
その時、家の中で皆の写真を撮っていたら、
変なものが映った。
背後の押入れから見知らぬ青白い顔の女が顔を出し、
こちらを睨みつけてる。
「これやばくないか?」と思い、
霊能力者に写真を鑑定してもらった。
「この写真からは霊気を感じない。心霊写真でも何でもないよ。」
それを聞いた僕らは安心した。
【解説】
生きた青白い顔の女が家の押し入れにいる。
1人になったら
パソコンをしていると一通のメールがきた。
なんだろうと開いて見ると
『一人になったら死ぬ』
の一言しか書いてなかった。
俺はちょっとビビった、イタズラメールだと思ったのだがその後すぐに、同棲してる彼女が
『コンビニ行ってくるからー』と言ってきた。
俺は一瞬焦った。このままだと一人になる…
いや、でもあれはただのイタズラだ。そうに違いない。
まさか彼女に『怖いから行かないで』とも言えるわけない…
『じゃあ言ってくるねー』、『………うん』
2時間後
なんだ大丈夫じゃないか!ビビらせやがって…
やっぱりイタズラだったんだな。
【解説】
ターゲットは「俺」ではなく「彼女」。
重量
夏の人ごみってうっとうしいよな。蒸れるし暑いし。
今日も、仕事で疲れてるとこに帰宅ラッシュの電車でダメージ受けて、
うんざりしながらマンションに帰ってきたんだよ。
エレベーターを待ってたのは、
おばさん、じいさん、小学生低学年くらいの男の子が2人、
男子高校生、黒いスーツの男、
背中にガキをおんぶして、幼稚園児の手を引いた若い母ちゃん。
次々に乗り込んで、最後に俺が乗った。
けど、ドアを閉めようとした時、白いワンピースの女がするりと乗ってきたんだよ。
で、「ブー」ってブザーが鳴ったんだよな。定員が九人だからさ。
恥ずかしそうに降りようとするから、代わりに俺が降りてやった。
彼女は「ありがとう」と小さく笑った。それが可愛くてさ。
まぁ、単に俺は満員が狭くて嫌なだけだったんだけどw得した気分w
そうそう、部屋に帰ってテレビつけたらニュースやっててさ、
なんかどっかのOLが行方不明なんだってよ。
それが超この辺で、ゾッとしたおかげでちょっと涼しくなったわ。
【解説】
結論から言うと、今回のケースにおいて、エレベーター内の人間の体重を多めに見積もったとしても、まずブザーは鳴らない。
しかし実際は鳴っている。これはどういうことか。ここがこの話のキモとなる。
ブザーが鳴った時エレベーターに乗っていたのは、
高校生以上の大人7人、小学生低学年が2人、幼稚園児が1人、赤ん坊が1人の計11人。
定員重量は「9人」、つまり11人乗って重量オーバーになったこのケースは一見違和感がない。
しかし小学校低学年の2人は、体重の合計を多く見積もっても60キロ程度(小学3年生の平均体重は20キロ台中盤〜後半)、
幼稚園児は10キロ後半、
さらに赤ん坊に関しては数キロ程度。
この4人を合計しても80キロにも満たない。
ここをかなり多く見積もっても、せいぜい90キロ。成人1.5人分程度の体重ということになる。
つまりブザーが鳴った際、エレベーター内は大人7人+大人1.5人分(子供4人)の、成人8.5人分の体重しかなかったことになる。
さてこれは9人が定員のエレベーター。
エレベーターの積載量は、基本的に成人1人につき65キロで計算する。
9人×65キロの計585キロ、
さらに余裕を持たせるためその合計に1.05倍〜1.1倍した、
“614キロ”程度が重量オーバーのラインである。
今回のケースでは乗っているのは成人8.5人分、
一人当たり65キロと考えても8.5人で合計は552キロ。
なお、女性の平均体重は50キロ台なのだが、ふくよかな大人が乗っていないという保障もないため、念のため重め(65キロ)に計算しておく。
また、服やカバン等の荷物の重量は一人当たり1キロ〜3、4キロ程度と想定できる。
若干重く見積もって4キロ×8.5人分=34キロ。
つまりエレベーター内の総重量は、
人間8.5人分(552キロ)+荷物8.5人分(34キロ)で586キロ程度となる。
ここまで色々と重く見積もってきたが、それでもブザーが鳴るための重量である614キロには30キロ近く足りていない。
しかしブザーは鳴っている。エレベーター内の体重だけでは足りていないのにも関わらず。
エレベーター「内」だけでは。
さて、この話の最後、「近辺でOLが行方不明になっている」ニュースが飛び込んでいる。
エレベーター「内」だけでは重量は足りないのになぜか鳴るブザー音、
そして行方不明になったOL。
つまり行方不明のOLの身体がエレベーターの「上」に存在するため、エレベーターの重量ラインをオーバーしたというのが真相である。
未来の予言
1980年のある日、
撤去予定された家屋の中を作業員が整理していると、
子供が書いた筆跡があるノートを見つけた。
書いてあった内容は未来の予言のようなもので、
「平成10年 富士山噴火 平成20年 日本沈没 平成30年 地球滅亡」
【解説】
予言の内容は的中しておらず、一見的外れな予言かのように見える。
しかし1980年、昭和55年の時点で次の元号が「平成」であるとなぜかノートの持ち主は知っている。
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