桐生八、不遇問題
さて、ハイキューを読んだ人の5本指に関する感想の中で、共通する意見があると思う。
それが「桐生八、どこいったん」問題である。
桐生八は春高編の一試合に登場しただけ、プロ編ではほぼ登場すらしない。
高校編とプロ編で試合描写がされたウシワカや、高校時代から最強格の高校の選手として注目されユースにも選抜され、プロでの試合描写もあった佐久早と比べて、
あまりに出番が少なく寂しい。
特に高校編では敗退した時点で出番がなくなるのはわかるし気にしなかったが(それでも一試合限りというのは寂しかった)、
プロ編に関してはそもそもプロに進んだのか、プロの中で順調に結果を出しているのか、日本代表には選ばれているのかいないのか、
何もかもが謎に包まれ過ぎてそのまま連載が終わってしまった。
八っちゃん…!
ただ桐生(そして角名も)オリンピックの日本代表には選ばれていることがイラストガイドブックにて明かされた。
それはそれで「じゃあ描写してあげてよ…」と思わなくもないが、
主人公と関わりの深いライバルキャラの描写を優先したということだろう。
試合外でも日向と繋がりのある影山、木兎
日向のライバル的ポジションのウシワカ、星海
烏野と試合での因縁がある宮侑、白馬、百沢、夜久
日向と同チームの佐久早
漫画的事情を考えると、主人公と関わりの深い彼らを優先するのはやむを得ない…
桐生や角名の優先順位が下がるのは仕方ないことなのかもしれない…と思ったが、ユースでの出番以外ほとんど描かれていない古森はしっかり描写されていた。
こ、古森まで描くなら桐生や角名のワンショットを…せ、せめて日本代表名簿的なのに名前だけでも…!!
桐生八は弱いのか?
さらに由々しき事態として、「桐生八」と検索をかけると「弱い」やら「その後」やら、
もう過去の人みたいなワードがサジェストに上がってきている。
ただ一読者として、その気持ちは大いにわかる。
私はたしかに桐生八擁護派だが、作中の描写は正直そこまで圧倒的なものではなかった。
“5本指の中で最も人間らしい感性”ということもあり読者が一番感情移入しやすいキャラなのだが、それだけにカリスマ性は無い。
唯一の試合では木兎&赤葦の成長の尺が半分以上を占めた格好となった。
桐生の活躍描写も要所にはあるものの、牛島や木兎のような圧倒的な描写は見られない。
桐生の大きな活躍描写は能力お披露目回と、終盤乱れたレシーブに対応した場面(「それ打つの」)くらいか。
試合中桐生は“調子が良い”という扱いを受けていたが(サーブが連続して決まるなど)、
その理由も「苦手な相手(木兎)と真っ向から向き合った結果、一皮剥けた」という、木兎相手だからこその活躍&木兎が桐生の能力を実質引き上げているようなもの…というように取られてもおかしくない描写となっている。要は「桐生すげー!」というよりも「木兎の影響力は凄いなぁ」という感想になってしまうのだ。
相手に影響されまくる、というのは桐生らしくて良いのだが、それでももう少し桐生個人のずば抜けた姿も見てみたかった。
三本指だとかその辺りの設定を抜きにして考えると、個人的な印象での強さの序列は以下の通り。
ウシワカ、木兎、佐久早>桐生>尾白アラン
並のエース級と比べると間違いなく桐生の方が上、ただウシワカや進化した木兎と比べるとちょっとインパクトに欠けるのは事実。
中学時代はサーブ&レシーブでは桐生の方がウシワカを上回っている、との評価であり
梟谷戦でも桐生はサービスエースを取るなどサーブで活躍している。
しかし一方のウシワカもその後サーブを磨き、烏野戦では「コントロールは不安定なところはあるものの威力抜群のサーバー」として定着していたし、なんなら作中トップクラスのサーバーである及川に次ぐ、くらいの評価。
もしかすると“桐生の方がコントロールが良い”というような設定くらいはあるかもしれないが、
桐生の方がサーブが上である、とは高校時点では言えなくなっている。
じゃあレシーブはどうか、と言うと中学時代に評価されてはいたものの、梟谷戦では活躍の機会はあまり無く。
さらに強靭なメンタルのウシワカと比べると、桐生はメンタル面の不安定さが終始描写されていた。
桐生の持つ「どこからでも打てる」「能力が満遍なく高い」という武器はいずれも安定性を象徴するかのような能力であり、地味とも取られかねない。
結果、桐生と同じくステータスが高い上に「高威力サーブ」「“左”のスパイク」「強靭なメンタル」などパンチ力のあるウシワカと比べると、
インパクトで見劣りする印象だ。
そして“満遍なくステータスが高いという安定性”という桐生の武器も、プロに入ってからは日向や星海をはじめ、多くの選手が手にしているものとなってしまった。
もし桐生自身のプロに入ってからの試合描写があれば、新たな武器が描かれたりしたのかもしれない。
桐生八は大したことないのか?
ただ、では桐生が大したことがないのかというと当然そうではない。
先程も触れたように中学時代は「総合力ではウシワカより上」、高校時代は「3大エース」、能力パラメータもウシワカと並びトップクラス、
と冷静に考えるとカタログスペックは物凄いことになっている。
また「体勢を崩されても、どんなボールでも、高威力で打ち抜く」という作中唯一無二の長所を持っているのがとにかくデカい。これのおかげで桐生より明確に上と言える選手が作中に存在しない。
梟谷戦での桐生の活躍ターンが少なかったのは演出の都合上仕方ない。
ただ、プロ編に関しては何らかの形で活躍の場面があっても良かったのかなぁ…とは思った。
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