言葉で説明し過ぎ
言葉で説明し過ぎ。
映像で見てわかることを、わざわざ独白のナレーションで二重に説明するのは非効率的だし、くどい。
観客をもっと信頼すべき。
テクノロジーのレベルがわからない
広大な宇宙ではあるのだけど、科学の進歩によりかなり短期で、かなり簡便に行き来が出来るようになっている。
……とまあ、それは良いのだが、それを成立させるためのテクノロジーのレベルが全く具体的で無い。
一応最低限は映像で見せられるのだが、ロジカルな説明が全くない。
ロジカルで無い以上、抽象的に理解しながら鑑賞を継続することになる。
この距離をその速度で進める理由は?
この素材はどの程度頑丈なの?
どこまでなら、宇宙服を着たまま侵入できるの?
ロジカルな説明が無ければ無いほど、事態の正確な把握ができず、ひいては観客の没入感も薄くなっていく。
没入感が薄くなるということは、あらゆる感動のレベルが下がるということである。
主人公の有能さの説得力が足りない
「どんな時でも心拍数が上がらない」「優秀」と、作中で触れられるのだけど、正直その説得力は薄い。
ことあるごとにメンタルが揺れてるし、優秀そうな振る舞いもしない。
主人公が問題を解決する時も、視聴者を唸らせるような方法は全く取らない。
大人が数秒考えたら思いつきそうな方法を取っていく。「あ、その方法で解決するんだ……」的な。
ロジカルな解決法では全く無い。
主人公の背景が足りない
主人公が他者とのコミュニケーションに難を抱える背景があまりにも薄すぎる。
過去回想が十分とは言い難い。
おかげで主人公に人間的な厚みを感じないし、共感もしづらい。
主人公が他者とコミュニケーションを積極的に関係を構築しないため、
主人公以外のキャラの掘り下げも減り、結果的に全員に思い入れしづらくなっていく。
実際、作中で誰が死のうと物語の筋が変わることはない。
死を通じて主人公が成長したり葛藤する機会も少なく、「死」が記号的なイベントでしかない。
死の必要性
最終的に父親が死ぬのは、多くの人がある程度予測しながら観ていたと思うが、
その死への流れも納得出来るものとは言い難い。
「はるばる海王星まで行って、その結末がそんな擦り倒された陳腐な死に方なのか」と言いたくなる。
「死」と言えば、実験動物にやられるくだりは丸々要らない。
マジで何だったんだ。ここまで必要のないシーンも珍しい。
また、主人公の行動がきっかけで、クルーが全滅したシーンに関してだが……
ここも色々言いたいことはあるが、一番言いたいことだけ言わせて欲しい。
やっぱり、主人公が優秀な人間には見えない。
カーチェイスで簡単にやられるなよ
月でカーチェイス?的な感じで襲われるのだけど、「危険なエリア」ということがわかっているのなら、そんな簡単にやられるなよ。
盗賊側が強すぎるのか、主人公側が弱すぎるのかはわからないけど、
普段あのエリアを往来する時も毎回死人を出してるのか?
だとしたら通過すべきではなくないか?
なんにせよ、危険なエリアと分かっておきながら対策が十分とは思えなかった。
「重要度の高い極秘ミッション」と言うのに、準備が不十分というだけでリアリティを感じづらくなる。
主人公にかかる責任は?
ラストで、主人公は当たり前に地球での生活に馴染んでるけど、
一緒に居たクルーを何人も死なせて、父親の疑念も晴れたわけではないだろうに、
当たり前に生活に復帰してる点が気になった。
罪に問われなくても、責任やらバッシングやらは起こるだろう。この辺りに関しても、とことんリアルに思えない。
まとめ
宇宙要素だけを見れば、大人が「宇宙飛行士ごっこ」をやっているのを見ている感覚に近い。
ただし、この作品が本当に描きたいのは「人間」なのだろう。だから、宇宙描写は多少目を瞑っても良いかもしれない。
……だが、肝心の「人間」というテーマを描き切れているかというと、ノーである。
浅い。本当に浅い。ここが致命的。
革新的なものが全く見えなかった。この作品ならではのものが無い。
結果、宇宙を見ても、人間を見ても、「うーん…」という内容と言わざるを得ない。
ストーリーにも無駄がありまくり。
「あれは何だったんだ」というシーンや要素が本当に多い。
特に実験動物。なんなんだキミは。
とはいえ、映像は綺麗である。
宇宙の雰囲気を感じたい方にはおすすめしたい。
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