面白い。
この作品が最も言いたいことは、恐らく「決めつけ」の危険性。
私はかなり好きな作品でした。
点数:88点
ワンシチュエーションで突き進む、低予算映画の極み。
ただ、この「ワンシチュエーション」という特性を、ハンデではなく特色に昇華するほど見事な演出。
通話先から聞こえてくる音声だけで、物語が進んでいく。
これにより、観客それぞれが自分の中の「決めつけ」のもと、想像を働かせる効果を生んでいる。
しかし、多くの観客の「決めつけ」は裏切られる。
改めて、この作品が最も言いたいことは、「決めつけ」の危険性。
音声だけで進行するこの作品の形は、この作品が発信したいメッセージと強い噛み合いを見せている。
いや、このメッセージを発信したいからこそ、ワンシチュエーションにこだわったのだろう。
オペレーター室以外の描写を少しでもしてしまうと、
想像の余地を削ることになるから。
「オペレーター室からは、外の様子をまともに確認できない」。
これこそが臨場感とリアリティにも繋がっている。
場面転換をしてしまうと、途端に「映画感」が強まり、リアルからは乖離する。
この作品を見ている間、私達がリアルな緊張感を味わうのは、こうした工夫があるからこそ。
だから、たっぷり間を取り、カットも挟まない。
私達は、もう一つの現実への没入体験をしたのだ。
精神疾患を持つ患者家族、という問題にも鋭くメスを切り込んでいる。
一方で、場面が変わらないため、「飽きる」という意見も見られた。
確かに、そういう声が生まれるのもやむを得ないかもしれない。
特に私は、最序盤で少し飽きかけた。
「こんなに間をたっぷり取るのか」と。
ただ、あれは、「リアルと同じ時間の進みでやっていきますよ」宣言だったのだな、と今振り返ったら思う。
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