若村の強み
選抜試験を通じて、「若村がなぜ隊長に任命されたのか」を考えてきました。
若村の性質は一言で言えばリスク重視、優柔不断といったところが挙げられます。
そこが彼の良いところではあるんですけど、じゃあ代案を出せるかというとそうではない。
リスクを冒した戦術に出ることもそうそうなく、結果大局的な損得から考えが離れがち。
そんな彼が隊長に抜擢された理由をいくつか考察。
①若村の能力の補完
彼の特性であるリスク回避という視点は、組織を運用するうえで重要なもの。
ここを本部に買われた説。
しかし一方で彼は、何かを選択する、決断するという隊長的な資質に欠ける。
また、出せるアイデアも少なく、柔軟性にも欠ける。
だからこそ、この訓練を通じて、
隊長として様々な選択・決断をして、
他の隊員の意見を聞くことで、
決断力と視点の数を補完し、
「若村の能力が補完されれば」というのが本部の狙いかもしれません。
若村自身が今後どこかの隊の隊長に任命されるのか、あるいは本部で何らかのサポーター的な役割を任命されるのかわかりませんが、
彼個人の性質を評価された上で、能力の底上げを期待されている。
②隊長育成の実験
作中の若村が四苦八苦しているように、隊長は簡単に務まるものではありません。
かといって「才能のある人間」「隊長向きの人間」しか隊長を務められないようでは、組織としては不安定極まりない。
そんな人間ばかりが入隊してくるかどうかは運次第、
隊長としての資質を見分けられるかも怪しい。
「隊長としての資質を見出せるか怪しい?
ならば、隊長としての資質を作るまで」
ボーダーの人材育成を行う上で、「隊長の育成」は必須。
だからこそ、若村という「突出した能力」や「隊長適性」を持たない人間を隊長に選出し、今回の訓練に身を置かせることで、
「どんな人間でも、隊長に育てていけるように」という実験の可能性もあるかもしれません。
③ネクスト修
「凡人」である修が隊長になってから成長していったように、
特別な武器を持たない人間であっても、
隊長をこなす中でやれる事を増やしていく場合もある。
卓越した能力を持っているから隊長になれるのではなく、
隊長になったから隊長になれる。
修に近いスペックの若村(※比較的)を隊長に選出することで、
若村に「修の成長」を再現し、それをモデルケースにする狙いがあるのではないでしょうか。
もしこの目論みが的中すれば、隊長育成のノウハウが築き上げられるだけでなく、
トリオン量が少ない人間にとっても「隊長」という選択肢が現実的に増えるので、
組織にとっても、伸び悩む個人にとっても、良いアイデア。
④若村の人間性
ここは個人的に思っていることなんですけど、若村は優しいと思う。
もちろんワートリに登場するキャラは概ねみんな優しいんだけどもうちょっと合理寄り、というか。
そんな中で若村は、合理から離れて感情に寄り添える人間でもあると思う。
また、若村は持たざる人間。
作中出てくるキャラは多くの「長所」が示されますが、
若村にはそれがない。
そんな持たざる人間だからこそ、
同じ持たざる人間に対して共感的に、フォローが出来る可能性はある。
そこから推察するに、本部はゆくゆくは彼に「教官」的な立ち位置を用意したりするのかなと。
隊長とはまた別で、C級隊員を監督する立場。
入隊してくる人間の8割くらいは恐らく「凡人」寄り。
物語では天才がメインで取りあげられますが、実際組織を運用する上で大事なのはこの「凡人」である隊員達をどう育て、運用していくか、という点。
若村なら、そういった人間ならではの苦悩に気付き、寄り添い、リスクヘッジもしながら、安全に隊員達を育て関わる事が出来る。
若村は、隊員としての資質は一線級の人間には及ばないままかもしれない。ただ、人を思いやったり、安全にまとめたりという、「人」としての資質は十分。
若村の数値に表れない部分を評価され、現場ではない場所で活躍の可能性を見出されようとしているのかもしれない。
コメント