Thisコミュニケーションはなぜこんなに面白かったのか【→これはデルウハ物語だから】

感想

デルウハの欲の対象は食事のみ。

ここが最大の勝因だと私は思う。

承認欲求、正義、性欲、
この辺りの鬱陶しい諸々の欲求をかなぐり捨てたおかげで、
万人ウケするキャラに仕上がった。

それは彼の言動にも現れていて、
彼は聡いが、
それをひけらかしたり、
自分の行いを友情や、愛情や、正義といった様々な理由で正当化したりしない。
卑下もしない。

彼にあるのは、
感情と、食への欲求と、そしてそれを遂行するための合理性のみ。
嫌われる要素がない。

行動も一貫している。
「必要だからそうする」
ただ、それだけ。

人間的な鬱陶しい部分をフルカットした恩恵の一つとして、
「作者の価値観とのズレ」を徹底的に排せたのが大きい。

漫画を読んでいて、

「この主人公の言動、作中では正義と持て囃されているけれど、うーん……」

と思ったことは無いだろうか。

その作品との価値観のズレを認識したとき、人はその世界に冷める。
作者とのズレを認識してしまうのだ。
そして、作者の姿が見えてしまうともう入り込めない。
なんなら、その作品のことを嫌悪するところまで到達してしまう。

その点、デルウハはそういうボロを出しづらい。
彼の人間味は、感情と、食への欲求と、そしてそれを遂行するための合理性だけなのだから。

なんなら、デルウハには可愛げがある。

ここがデルウハの面白いところだ。

彼には感情がある。
思い通りにいかないと悔しがるし、うまくいけば満足する。

作中での扱いも絶妙だ。
確かに彼は人を殺す。

だが、「確かにこの状況だと、それも選択肢に入るかもな」と読者が共感したくなる状況で発動することが多い。

もちろんそれを超える殺しも少なくないが、
そこは彼自身が痛い目にあったり、冷や汗をかいたりすることで、
彼が「単なるいけすかない暴君」で終わらないように描写されている。
デルウハに関するヘイト管理が素晴らしい。

この作品はデルウハ物語なのだ
デルウハが何かしているだけで読者は楽しいし、面白い。

反対に、デルウハが全く絡まないパートはこの作品の大きな弱点と言える。
ある意味、全員がデルウハのかませ犬。
ハントレスの一部も若干出番を食われ気味、

ハントレス以外のキャラに至っては、所長や吉永以外は正直魅力に欠けている印象である。

ただ、それでも話の多くが面白かったのは、
デルウハが出ないパートでも、
キャラ同士がデルウハに関する話をしていたり、
デルウハに影響しそうな言動を繰り広げていたから、
というのが大きい。

改めて言うが、
この作品はデルウハ物語なのだ。

人気投票があったら、ぶっっっちぎってデルウハが勝つことだろう。
私はよみ推しなのだが、
それでもデルウハに投じてしまいそうな勢いである。

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